去年の夏、山口で開催された研修会の翌日、萩へ行った。ご存じのように、萩は吉田松陰、高杉晋作、伊藤博文、木戸孝允など、明治維新の原動力となった多くの人々を生み出した町である。
にもかかわらず、平成の「萩」はしっとりとした静かなたたずまいを見せ、「この町のどこからあの強烈なエネルギーが湧いて出てきたのだろうか」と、そんなことを考えながら適当にぶらぶらと城下町を歩いていた。
喉の渇きを覚え、一服しようと思っていたら、ちょうどいい具合に喫茶店が2軒並んでいた。外に出してあるメニューを見ると、コーヒーの値段が違う。普通2軒の店が並んでいれば同じ値段にするものだが、どうしようかと迷った末、前日の“プレゼン”のご褒美に奮発してもらい、50円も高い方の店に入った。
中に入ると陶芸品やステンドグラスの制作もしているというマスターが、仕事そっちのけで熱っぽく萩の歴史や観光名所の講義をしてくださり大変参考になった。
その後、マスター推薦のコースを見学したところ、要所を簡潔に見て回ることができた。じっくりと歴史探訪をする余裕がなかった私たちにとって、とても役に立つ情報であった。
さて、海沿いにある道の駅で昼食をとることにした。そこで初めて「のどぐろ」に出会ったのである。のどぐろと聞いて何を連想されただろうか。腹グロには邪悪なイメージが付きまとうので、のどぐろは腹よりは口に近く、少し可愛げがあるかもしれない。たとえば、すぐにばれる嘘を平気でつく気の毒な人を連想されただろうか。
じつは、のどぐろとはアカムツの別名で、煮ても焼いても刺身にしてもおいしい高級魚である。文字通り喉の奥が真っ黒で目玉が大きく“金魚すくいの金魚”を大きくしたような可愛い魚だが、一箸つけると程よく脂の乗った上品な白身がほろりと現れる。小振りな見かけと中身が全く違い、なかなかやるなという感じなのだ。
まあ、一度しか食べたことがないので偉そうなことは言えないが、魚好きの私にとって維新の町で食べたのどぐろは格別な味だった。
H25.2月号 陽だまり語録 54
▲のどぐろ定食
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