初夏のフィンランドへ行った。2018年世界幸福度ランキング第1位の国である。本当にそうなのか――ぜひ自分の目で確かめたかった。豊かな森と数多くの美しい湖、ムーミンとサンタクロースの故郷(ふるさと)、遥かに遠い北欧の高福祉国家というのが我々のイメージである。
▲ヘルシンキ中央駅
ところが、意外にも関西空港から首都のヘルシンキまで、直行便なら僅か10時間で行けるのだ。とは言え、そんなに簡単に行けるところではない。諦めていたら、幸運にも訪問できることになった。出発までの1か月間、慌ただしく準備をした。直行便のチケットが取れ、離陸の2時間前に空港へ到着するリムジンバスも予約した。しかし、「何が起きるか分からないから、もう一つ前のバスに乗って」と、子どもたちが口を揃えて言う。仕方なく始発のバスに予約を変更した。
出発予定は6月18日の朝だった。そう、その朝、大きな地震が大阪を襲ったのである。自分の考えに固執していたら、空港に到着できていなかったかもしれない。素直に従って良かったと改めて思った。
▲地震直後の関空 待機するフィンエアー 2018年6月18日
さて、大きな地震があったにも関わらず、わずか2時間遅れで離陸し、同日夕刻ヘルシンキに到着した。フィンランドで嬉しかったのは、水道水が美味しいこと。靴を脱いで家に上がること。シャイで真面目な人が多いこと、つまり日本にとても良く似ていることだった。
初夏のヘルシンキの天気は目まぐるしく変わる。到着した翌日は晴れ、雨、突風、時々アラレという荒れ模様だったが、北欧の夏はいつまでも明るく、午後8時の青空に大きな虹がかかっていた。その二日後、旅の目的だったあるフィンランド人家庭を訪問した。
「ヘルシンキの空にかかった虹は、二つの家族を結ぶ希望と友情の架け橋です」
と、かっこいいセリフを英語で言ってから乾杯した。気障(きざ)なセリフも英語なら平気で言えるから嬉しい。
結婚し、この国で暮らすことを決めた我が娘のことを考えるととても心配だった。でも優しい彼の家族と会って安心した。ふと、”フィンランドの息子”を見ると、彼の瞳は穏やかな夏のバルト海のように青く澄んでいた。
H30.9月号 陽だまり語録 121
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