世界一周地図の旅

 小学生のころから地図を見るのが好きだった。地図帳を無作為に開き、そのページのどこかに注目する。もしそれが大河だったら、どこからどこへと流れているのか?流域にはどんな景色があり、どんな人たちが住んでいるのかと知りたくなった。

 図書室へ行き、大きな地図帳と百科事典などで詳しく調べると、写真や資料によってさらに興味が増すのであった。6年生になると、同じ組に地理が大好きなライバルが現れた。世界各国の首都や日本の県庁所在地を競うように覚えて、休み時間にクイズを出し合ったりした。今ならインターネットを通して、世界中どこにでも想像の翼を広げることができる。

 たとえば、関空からニューヨーク、ロンドン、パリ、モスクワ、上海経由で帰ってくる世界一周の旅を計画するのだ。飛行機やホテルを仮想で予約し、観光名所や歴史、特産品を調べてみよう。パソコンやスマホのストリートビューという機能を使えば、まさにその場所にいるかのような疑似体験も可能である。映像メディアを通して知った地名を地図で確かめるのも面白い。逆に地図を見た後でネット検索し、想像した景色と実際の景色を比べるのも楽しいものだ。地図で訪問した地域の名産品をネット通販で購入し味わうこともできる。

 映画化された小説にも同じことが言えるかもしれない。小説を読んでから映画を見るのと、映画を見てから原作を読むという、二つの楽しみ方がある。好みの問題であるので良否の判定はできないが、個人的には、読書の後、映画を見た方が、想像した美女や風景などと映画のシーンを重ね合わせながら二度楽しむことができて好きだ。

 今、新型コロナの感染拡大によって、医療、教育、運輸、観光、飲食業界のみならず、ほとんどの社会的活動が疲弊(ひへい)し、外出の自粛(じしゅく)も余儀なくされている。「そんな心のゆとりなんかあるわけがない」と、いわれる方もたくさんおられるだろう。しかし、こんなときにこそ小さなことに喜びを見つけ、いつか必ず実現するぞと夢を持って生きることも大切だと考えるのである。

 R2 10月号 陽だまり語録146

 ▲広州駅高速鉄道入場ゲート

陽だまり語録

あってもなくてもいいけど、あったらいいな、という食後のお茶かコーヒーみたいなエッセイです。「陽気」誌連載(2008.9~2020.12) ペンネーム: ビエン.J.K

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