おぢばでは、毎年1月5日から7日まで「お節会」が開催される。元旦祭にお供えされた鏡餅が雑煮として一般信者に振舞われる伝統行事で、3日間で約8~9万人もの帰参者がある。お節会の雑煮は、焼餅に水菜を添えたすまし汁というシンプルなものだ。
我が家の雑煮も、すまし汁に茹でた丸餅とほうれん草と竹輪の輪切り。だから雑煮とはこんなもんだと子供の頃からずっと思っていた。 ただ、子供のころ母の実家で出された雑煮は特別だった。甘い白みそ仕立ての「あんこもち雑煮」だったのだ。しかしそれなりに美味しかったのは、ぜんざいだって甘いお汁にお餅が入っているのだから、と思ったのかもしれない。
さて、大学生になり友達との雑談で正月の話題に触れた。すると地方ごとに特色のある雑煮があり、しかもかなり豪華だった。我が故郷は正月から質素倹約なのかと少々さびしかった。ところがである。岡山の同郷の友人宅を初めて正月に訪れた時、雑煮を出されて驚いた。すまし汁に茹でた丸餅とほうれん草、続いてお椀の中には、ごぼう、人参、ユリ根、かまぼこ、鶏肉、牡蠣、その上“鰤”までも入っているではないか。 聞けば、これがこの辺りでは“ふつう”なのだと言う。では、私が今まで“ふつう”だと信じてきた雑煮はどうなるのだ。
お節会の雑煮は水菜だけだ。だが、3日間で10万人近い人々が親里を訪れ「おいしい」と絶賛する。やはり信者だから付加価値があるのだろうと最近まで考えていた。
ところが先日、インターネットでこんな記事に出会った。
「今年うかがった中で一番感動したのは『水菜の雑煮』。一番出しのすまし汁に具は水菜のみ!なんて美しいんでしょう。素材の味のみの究極の雑煮という気がしました」
これがお節会のことかどうかは分からないが、嬉しかった。お節会の雑煮は、真実の心で親神様にお供えされた鏡餅である。それらが大勢の人々の手で食べやすい大きさに何十万個にも切り分けられ、一つずつ丁寧に炭火で焼かれ、温かい絶品のすまし汁にシャキシャキ水菜とひのきしんの真実を添えて出される美しい雑煮なのだ。だから、おいしいのだ。
H24.1月号 陽だまり語録 41
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