砂丘をミタ

「ハワイへ1泊2日で行って来ました」と話したら、えーっ!と講演会場から驚きの声が上がった。「実は、鳥取の“はわい温泉”です」と言うと一同納得されたが、昨年の秋、ある研修会に出席するため倉吉市に行った。

▲砂のアート(鳥取砂丘ではありません。たぶん天草の海岸)

 その日、私たちの車が市内に入るとたくさんの人々が日の丸の小旗を振って迎えてくれた。えらいところへやってきたなあ…と思ったが、すぐに天皇皇后両陛下が鳥取にご滞在中だったことを思い出した。どうやらご訪問の直前だったらしく、沿道に大勢の方たちがお迎えに出ていたというわけである。私たちは恐縮しながら、その日の丸街道を通り過ぎた。

 さて研修会では、ある季刊誌の制作秘話やインターネットの活用方法など興味深いお話を聞くことができてとても面白かった。また、その夜ホテルで調べたら、翌日に鳥取砂丘を回っても予定の時間内に岡山まで帰れることが分かった。

 私は隣県に住み、しかも鳥取県にはよく行くにもかかわらず、一度も砂丘を訪れた経験がない。そこで、同じ車で参加された方々にお願いして訪れることにした。

 鳥取砂丘へは、はわい温泉から9号線バイパスに乗り東に進む。左手に美しい日本海の水平線がくっきりと眺望できる。途中に白兎(はくと)海岸がある。因幡(いなば)の白兎(しろうさぎ)の神話で有名なところだ。

 白兎は隠岐の島からワニの背をぴょんぴょん跳んで来たと言うが、ここから隠岐まで直線距離で約100㎞。1メートル間隔で並んだら約10万匹のワニが集まったのかあ?…。

 すごいなあと驚きながら通過。約1時間で砂丘に着いた。駐車場から砂丘の入口まで歩いて登ると、砂丘が一望できる。大きな砂丘はすぐ目の前にあり、その先の海岸まで歩いて行けそうだ。よし、と歩き始めたその時、砂丘の上にいるほんの豆粒ほどの人たちの姿が見えた。近くに見えるが、実はかなりの距離があるのである。

 私はしばらく白く輝く砂の山と深い蒼(あお)を湛えた日本海をじっと眺めた。私たちの周りにも存在が大きすぎてあまりにも身近に感じ、その偉大さを見失っているものがないだろうか?そんなことを考えながら、砂丘をミタだけで家路に着いた。

H24.3月号 陽だまり語録 43

陽だまり語録

あってもなくてもいいけど、あったらいいな、という食後のお茶かコーヒーみたいなエッセイです。「陽気」誌連載(2008.9~2020.12) ペンネーム: ビエン.J.K

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