東南アジアに行ったという友人からお土産をもらった。新書版サイズくらいの白い紙包みで、表面に「サソリの標本」と印刷されている。裏面には「サソリは恐いぞ。毒があるぞ。飲まず食わずでも1年以上も生きることがあるぞ」というようなことが日本語と英語で書かれてあり、なにやら怪しげであった。「すぐ開けてみて」と言うので、ゆっくり開いた。
すると中には、赤いサソリの絵がついた紙包みが入っている。恐る恐るそれを開きかけた途端、内側から「パタ、パタ、パタ」と音がして、ヒエ~ッと驚いた。無論、友人はしたり顔で大喜びである。標本の正体は秘密にしておいた方が楽しいので、ここでは公開しないが、まあ、小学校の低学年でも作れるし、20個ほどの材料セットがわが家でも簡単に準備できたので、そんなに大したものではないと想像していただきたい。これを自教会で毎月開催している「キッズひのきしんクラブ」で制作することにしたのである。
当日、子供たちから代表2名を選んで体験させた。「このサソリは、人間なら2分、馬なら5分で死んでしまう恐ろしい毒を持っています。これは標本だけど、まだ生きているかもしれません」とか真面目に説明をしながら包みを渡し、開けてもらうとビックリ!子どもたちは大喜びだった。みんな熱心に作った。昼食になり、誰に渡そうかと相談中、ある女の子のお母さんがやってきた。この“犠牲者第1号”は娘さんからサソリの標本を渡され、「早く」と急かされて開けた途端「ウワぁ!」とビックリ仰天。彼女にはちょっと気の毒だったけど、場内がどっと沸いた。「決して心臓の弱い人や、お年寄りには渡さないように」と念入りに注意して持ち帰ってもらったが、その夜、各家庭で悲鳴が上がったことは言うまでもない。
後日、子どもたちが嬉しそうに教えてくれたので間違いないのだ。さて、このようなかわいい毒なら許せるが、心の毒(どく)は人の心を傷つけ曇らせる。『できれば心のほこりを払い、濁りをとって「徳(とく)」となるように心掛けたいものだ』と、毒にも薬にもならぬ文を書きながら思った。
H23,4月号 陽だまり語録 32
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