世界幸福度ランキング

 今年も国連が世界幸福度ランキングを発表した。気になる日本の順位は58位である。え、なんで。もっと上ではないの?と怪訝(けげん)に思われる方が多いと思う。政治経済が安定し安全で豊かな国、古い歴史と高度に発達した科学を併せ持ち、礼儀正しく清潔好きな人々の住む国、これが日本のイメージだと思うのだが、このランキングは外から見た幸福度ではない。

 国内総生産、平均余命、社会的保障、政治的な自由や腐敗度に加えて、国民がどれくらい幸せに感じているかを評価して表したものである。では1位はどこなのか?2年連続世界一に輝いた国は北欧の国、フィンランドである。国民の教育水準が高く、人権を尊び自然や環境に配慮する意識が強い。税金がクリーンに使われ、社会福祉制度が充実し治安も良い等々、高評価の材料は数えきれないほどある。しかし強い光には濃い影があるように若者たちとって「大人の国の安定感」が時に窮屈さと息苦しさを生むことがある。さらには様々な社会的、経済的諸問題を抱え、幸福度世界一を喜んでばかりはいられないようだ。

 過日フィンランドに住む長女が一時帰国したときに「実際に住んでみて幸福度世界一の実感はあるか」と尋ねてみた。すると、「冬は暗くて寒くて長い。税金も物価も高い。食事は質素だし、頻繁(ひんぱん)に遊びに行くわけでもない。でも小さなことに喜びを見つける心の豊かさを持っている。たとえば、夫は家族と一緒にいて本を読んでいるときが一番幸せだと感じている。」という答えが返ってきた。

 そのときふと『お屋敷に居(お)るものは、よいもの食べたい、よいもの着たい、よい家に住みたい、と思うたら、居(お)られん屋敷やで。よいもの食べたい、よいもの着たい、よい家に住みたい、とさえ思わなかったら、何不自由ない屋敷やで。これが、世界の長者屋敷やで。』(稿本天理教教祖伝逸話編78「長者屋敷」)という教祖のお言葉を思い浮かべた。 

 身(み)の丈(たけ)に合った生活を尊び、軸のぶれないどっしりとした幸福感、これこそが幸福度の根幹を為すものなのだ。たとえどのような境遇にあったとしても、幸不幸は自分の心が決める。

R1.7月号 陽だまり語録 131

陽だまり語録

あってもなくてもいいけど、あったらいいな、という食後のお茶かコーヒーみたいなエッセイです。「陽気」誌連載(2008.9~2020.12) ペンネーム: ビエン.J.K

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