曼殊沙華(まんじゅしゃげ)

 秋の蒜山高原に行ってきた。「蒜山」は難読な地名の一つだろう。しかし2011年に姫路で開催された第6回B–1グランプリで「ひるぜん焼きそば」が金賞に輝き、一躍有名になった。

 B-1グランプリは「ご当地グルメでまちおこしの祭典!」を標榜(ひょうぼう)している。したがって知名度が高まり観光客が増えることは本来の目的にも適い、とてもよいことだと思う。ところが、私は最近までこの大会をB級グルメの日本一を決める商業主義的イベントのようなものと誤解しており、恥ずかしい限りである。だからというわけではないが「ひるぜん焼きそば」の幟(のぼり)を発見して、迷わずに道沿いの食堂に入った。店の人の応対もよく、濃厚味噌だれでやや太麺の焼きそばは、期待通りの美味しさだった。

 帰路、「曼珠沙華(まんずしゃげ)」とも呼ばれる彼岸花の群生があちこちに見られ、秋の景色を一段と引き立てていた。だが、蒜山では余りその姿を見かけなかった。まあ「死人花(しびとばな)」とも呼ばれ有毒な彼岸花はモグラやねずみなどの侵入を防ぎ、畦を守ってくれるため人間にとっては有益であるが、牛や馬にとっては余り嬉しいものではないようだ。特に彼岸花の球根にはリコリンという毒が多く含まれ誤って食べると大変なことになる。しかし、すりおろして何日も流水にさらして毒抜きをすると、良質なでんぷんが取れ、飢饉の時の非常食として多くの人々の命をつないできた花でもある。

 つなぐということは切れかかっているものを引き止めておくことも意味する。だから決して安易な気持ちでできるものではない。私達は陽気ぐらしにむけて生命(いのち)のバトンを親から子、子から孫へとつないでいる。だからこそ親神様から貸していただいている身体に感謝し、生命(いのち)を大切にしなければならないのである。

 さて、この「陽だまり語録」が今回で百回目を数える。連載を始めた頃は1年も続けば良いと思っていた。しかし「がんばり過ぎずにがんばる」をスタンスにしてここまで続けてこられたのは、たくさんの方々の暖かい応援のお陰である。これからもボチボチとつないでいく次第だが、百回目のお祝いは「まんず、酒(さげ)」かな。

H28.12月号 陽だまり語録 100

陽だまり語録

あってもなくてもいいけど、あったらいいな、という食後のお茶かコーヒーみたいなエッセイです。「陽気」誌連載(2008.9~2020.12) ペンネーム: ビエン.J.K

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