えっ、うそでしょ

  「世にも不思議な物語」というTVドラマがある。日本でも似たような人気番組があるが、本家アメリカ版は本当にあったという超常現象を元にしたもので、幽体離脱、未来予知、幽霊やドッペルゲンガー(自己像幻視)など、ちょっと怖いけど、ドラマとして見れば、わくわくとしてとても面白い。ところがそれが、わが身に起こったとすればどうだろうか? 実はある朝、とんでもないことが起きたのであった。


  ある暑い夏の朝のことだった。私はいつものように神殿の掃除を終えてから教服に着替え、朝のおつとめに備えた。その時は別に何とも感じなかった。しかし、朝勤めを終え、親神様、教祖(おやさま)、祖霊様への祈念の後、上段から下がろうとした時だった。頭部にひどく嫌な不快感を覚え、背筋がぞくぞくとした。「これはもしや」と思った瞬間、頭頂部に激痛が走った。慌てて教服の冠(帽子)を取り、頭髪の中を振り払うと、床に10センチ以上もある大きなムカデが落ち、逃走しようとしているではないか!

 経験がある方ならお分かりだと思うが、大ムカデに噛まれると飛び上がるほど痛く、ムカデの持つ毒のせいで赤く腫れ上がってしばらくうずき、痺(しび)れが残ったりすることもある。そのような奴に頭を、しかも加齢によって無防備になりかけている部分を直撃されたのだから、ひとたまりもない。

 私はその場にうずくまり、家人はすぐに救急車を呼んだ…では「世にも不思議な話」とはならないのだ。私はムカデを捕獲し、情け容赦なく即座に処分した。それから長男が「大切なところだから」とすぐにおさづけを取り次いでくれた。すると驚くべきことに痛みがピタリと止まったのである。念のために毛虫に刺されたときの軟膏を塗布したが、その後も痛みは全くなく、僅かに噛まれたところが痒(かゆ)いだけだった。本当に嘘のような「世にも不思議な話」であった。

 恐らく皆様のまわりには、私よりもはるかに頭頂部が無防備な方がいらっしゃるに違いない。その場合どうなるのだろうか?滑り落ちるのだろうか?

 試して見たいが、その勇気はない。

H26.1月号 陽だまり語録 67

▼“超アナログ的加工”を加えた約30年前の筆者 「えっ、うそでしょ!」

陽だまり語録

あってもなくてもいいけど、あったらいいな、という食後のお茶かコーヒーみたいなエッセイです。「陽気」誌連載(2008.9~2020.12) ペンネーム: ビエン.J.K

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