北欧の国フィンランドを訪れた人から、お土産をもらった。渡欧前にリクエストしていた「サルミアッキ」という飴である。フィンランドは広大な森林と十数万もの湖沼(こしょう)などからなる自然豊かな国で、首都ヘルシンキへは関空から直行便で約10時間あまりで着く。サンタクロースとムーミンの故郷としても有名であり、穏やかでシャイな国民性と言われている。
その国の多くの人たちに親しまれている国民的飴が、なぜかインターネット上では「世界で一番まずい」と不名誉なコピーをつけられているのだ。
そんなまずいものをわざわざリクエストしなくてもいいではないかと思われるかもしれないが、自分で試してみないと本当の評価はできない。ぜひ一度食べてみたいと、念願していたのだった。サルミアッキには、お酒やガム、アイスクリーム、チョコレートなどもあるので、正確にはサルミアッキ味の飴というべきであろう。
その飴を恭(うやうや)しく掌(てのひら)に乗せて匂いを嗅いだ。かすかなアンモニア臭がする。一粒口に入れて噛んでみた。グニュッとした歯ごたえがあり、甘くて塩からく、わずかな苦みがある。パッケージの成分を調べてみると、リコリスという甘草と塩化アンモニウムが含まれており、これらが味の決め手になっているようだった。
しかし、世界一と言われるほどまずくはない。むしろ懐かしい味がする。匂いは違うが甘くてしょっぱくてグニュッとした独特の食感…その時、子供のころよく連れて行ってもらった団参列車の風景がふと浮かんできた。当時、天理の土産といえば昆布飴と粟(あわ)おこしが定番だった。その昆布飴によく似た味だったのである。だから懐かしく、慣れると何度でも食べたくなる不思議な味なのだ。ネットの評判だけで判断してはいけないと改めて思った。しかし、世界一まずい飴というのは非常にインパクトのあるキャッチコピーであり、多くの人に興味を抱かせる。
うーむ私のエッセイも、世界で一番へたくそなエッセイというのは恐れ多いので「お道で一番へたくそなエッセイ、でもハマったらこわいで~」というコピーで宣伝してみようかなあ。
H29.3月号 陽だまり語録 103
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