深視力

 深視力検査というものがある。大型車の運転免許の取得や更新のときに必ず受けなければならない検査で、針金のような3本の小さな棒が立っていて、真ん中の棒だけが前後する。それが両側の棒と平行に並んだときにボタンを押すだけの簡単なものである。

 しかし、これがなかなか厄介なのだ。以前は試験官の手動式だったので、棒を見るより検査機のハンドルを回す試験官の手さえ見ていれば簡単にパスしたのだが、最近は機械式になってしまい、その技が通用しなくなってしまった。しかも何度も失敗しているうちに焦ってきて、3本の棒が4本に見えたりする。正直なところ運と感だけに頼っている始末である。

 こんな苦手意識を持っているのは自分だけかなあと思っていたら、「深視力検査はいやだ」とおっしゃる方がたくさんおられ、安心した。敬愛する北海道のHUHU先生もそのお一人で、これまでとても苦手にしておられたらしい。

                           ▲走行距離メーターにご注目!

 ところが、今年の4月に受けられた深視力検査では、ご自分でも良く分からないうちに簡単にパスしていまい、「試験官が大目に見てくれたか、なんてね」と不思議がられていた。「“紳士力”がアップされていたのでしょう」と、先生の魅力的な笑顔を思い浮かべながらコメントすると、「あはは、紳士力かあ!いいね」とお応え下された。そうか、紳士力を磨けば深視力もアップするのかと短絡的に考えたが、実はその方が遥かに難しい。さて、どうすれば苦手意識を克服できるのかとインターネットで検索していたら、「深視力アップのコツ」という記事を発見した。

 急いで読んでみると、その方法とは、すなわち動いている棒を見つめてはいけないということである。左右どちらかの動いていない棒に焦点を合わせていればいいのだ。そうすれば、3本が並んだ時がはっきりと分かるのである。つまり、動いているものばかりに気を取られるから焦点がぶれてしまうのだ。腰をすえ、動いているものをしっかり支えている方を基準にすれば、全体がバランスよく見えるのである。

うーむ、深視力は、やはり手ごわい。

H25.7月号 陽だまり語録 59

陽だまり語録

あってもなくてもいいけど、あったらいいな、という食後のお茶かコーヒーみたいなエッセイです。「陽気」誌連載(2008.9~2020.12) ペンネーム: ビエン.J.K

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