燻製(くんせい)を作った。燻製には冷燻、温燻、熱燻の三種類がある。温度管理が難しく本格的な冷燻、温燻ではなく、このうち入門者でも比較的簡単にできる熱燻にチャレンジした。
この熱燻は保存を目的とせず、チーズやソーセージなどの加工品に香りを加えるだけなので、とても簡単なのだ。また、火を通しておいた鮭の切り身などもスモークすると、これまた絶品の味になる。自教会で開催しているキッズひのきしんクラブでもときどき燻製を作るのだが、こども達でもすぐに作ることができて好評である。無論、火を使うので細心の注意が必要なのは言うまでもないが。
さて、この燻製作りに初めて出会ったのは、10年以上も前に大学の先輩宅を訪問したときである。そこで手作りの燻製を出していただき、とてもおいしくて感激した。自分でも是非やりたいと思い、先輩にご教授を願うと「自分でやってみろよ」と突き放された。冷たいなあとそのときは思ったが、決してそうではなかった。初めから手取り足取り教えてもらうと、喜びが減るのである。つまり、やり遂げた時の達成感がまるで違うのだ。図書館で本を借り、インターネットで調べ、道具をいろいろと自作して試してみた。失敗を重ねて改良し、その結果、費用を余りかけず、簡単で、しかもおいしくできる方法を見つけたときの喜びは一入(ひとしお)であった。上手な人がすると簡単そうに見えるが、実際はそうではない。自分でやってみなければわからないのである。
燻製は、元々食料を保存するために生み出された生活の知恵なのだろうけど、燻(いぶ)すことによって素材の生臭さを消し、特有の香りをつけてくれる効果もあるのだ。たとえば、茹(ゆ)でただけの鶏肉が薫(かお)り高い逸品になり、安物のチーズが驚くほど美味しいスモークチーズとなるのである。ということは「人間にだって時には、同じことが言えるのかな」と思った。誰だって、会えば小言を言う人、つまり煙たい人には近づきたくない。しかし、実はその人が自分に芳(かんば)しい風味を与えてくれる恩人なのかもしれないのだ。煙たすぎるのは嫌だけど、燻製は、味わい深く面白い。
H26.2月号 陽だまり語録 66
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