今年の6月、フィンランドに行った。現地人と結婚した娘と面会し、新しい親戚に挨拶をするための訪問だった。空港まで迎えに来てくれた”フィンランドの息子”と電車でヘルシンキ中央駅へと向かった。
地下にある空港駅のホームは実に広々として静かだった。車窓には緑豊かな森と透き通った青い空が広がっている。途中の駅で、まず日本ではありえない光景を目にした。
なんと乗客が駅のホームで自転車に乗っているのだ。電車が到着したら、自転車を降りてそのまま乗ることができる。
昨年の春節に訪れた香港の地下鉄や高層ビルをつなぐ通路は「人山人海(黒山のような人だかり」だった。対極にあるような両都市の様子がとても新鮮で味わいがあり面白かった。
ホテルで旅装を解き、訪れた娘夫婦のアパートで夕食をご馳走になった。おいしいフィンランドビールで乾杯し長旅の疲れを癒した。
テーブルには2種類のニシンの酢漬けが並んでいた。ニシンは小骨が多く、煮たり焼いたりする調理法には余り向かない。酢に漬け込んで保存食として冬に備えたり、あるいは香ばしい素揚げにして小骨ごとバリバリと食べる。
甘酢にニシンの切り身というプレーンの物と、マスタード、マヨネーズ、ハチミツやディルという香草で風味豊かに味つけされたものがあった。この酢漬けを瓶から取り出して皿に乗せ、茹で立てのジャガイモ、チーズ、ハムなどと一緒に食べるのが一般的なフィンランドの家庭料理である。
フィンランドでは、ほとんどの商品に付加価値税が24%(食料品は14%)も課せられ物価は高い。しかし、税金は高水準の社会福祉政策や事業の充実のために有意義にしかもクリーンに使われるので市民から不満の声は少ない…というのだが、「ほんとうだろうか?」と思いながらプレーンの方を口にした。その途端、あれれと思った。
その味は我が故郷岡山の名物「ままかりの酢漬け」にそっくりだったのである。実はままかりもニシン科の魚であるということを後日知ったのであるが、馴染み深い味を噛みしめながら、縁とは、まことに不思議なものだと思った。
H30.10月号 陽だまり語録 122
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